大人の発達障害

「発達障害」は、今まではこどもの問題とされてきましたが、知的な問題のない場合は成人になってから発達障害の診断を受けることが多く、近年は「大人の発達障害」が話題となっています。こどもの発達障害は検診などで見つかることが多いですが、成人の場合、就労の段階で仕事がうまくいかず、「生きづらさ」がより顕著になり来院します。「マルチタスクができない」「ミスが多い」「空気が読めないと言われる」など、「生きづらい」と感じていた感覚が、就労することにより現実のものとして押し迫ってくるのです。

〇特性の捉え方
このように来院される方の多くは、発達特性が日常の「障害」となっています。ただ、発達特性はネガティブな側面だけではありません。例えば、ADHD(注意欠如・多動症)でよく言われる下記のような特性は次のようにリフレーミングすることができます。

・集中力が続かない→いろいろなことに興味を持って取り組める
・衝動的に思ったことを言ってしまう→裏表がなく自分の意見をハッキリ言える
・落ち着きがない→フットワークが軽い
・単調な作業が苦手→発想力が豊かで創造性のある仕事が得意

また、ASD(自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害)特性であれば
・規則やルールにこだわる→まじめで正義感が強い
・興味や関心を持つ対象が限定的→関心のあることには集中力を発揮できる
・言外の意味が理解できない→言われたことを真摯に受け取る
・突発的な対応が苦手→ルーティン作業にコツコツと取り組める

〇特性にあった環境選びや対策を
このように自分の特徴をしっかり把握し、それらを生かせる環境に身を置けば、特性が「障害」とならずに長所となる場合も十分にあり得ます。また、生まれ持った特性を努力で変えることは難しいため、苦手なところは苦手なこととして本人や周囲の方が受け入れることも必要です。その上で、自分に合った対策を考えることや、苦手なところは周囲の人にお願いすることが大切でしょう。もし「こんなに一生懸命やってるのに全然うまくいかない」など「生きづらさ」を抱えている方がいれば、ご来院ください。少しでもそうした「生きづらさ」を軽くするお手伝いができればと思います。

参考文献:
『ササッとわかる「大人のアスペルガー症候群」との接し方』加藤進昌・著(講談社)
『大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本』太田晴久・監修(西東社)

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